発進塔

459号 発進塔:令和6年 仕事始め式① 会長偏

掲載日:2024年03月01日

今日は仕事始め式ですが、私にとっては仕事納めになります。最近、耳が聞こえづらくなり、会話も一割位しか成り立っていないのではないか、これでは仕事にならない、と昨年十二月二十日の役員会で引退を決めました。後任には私の次男で稲穂会の理事長に引き受けてもらうことになりました。理事長は稲穂会が常勤のため、慈永会は非常勤となります。また医療関係以外の実務は、このまま副理事長が取り仕切る、二本立てでやっていこうと思います。

如水館前に車イスを押す像、あの二人がこの二人です。彼らが小学生位で、慈恵の理事長がカバンを持って、はまゆうの副理事長が長男の車イスを押して学校に通うのが日常でした。その行動は私がカバンを持ってやろうとか車イスを押してあげようとかいうのではなく自然にそういう動きがみられた訳で、これが本当の福祉だ、福祉の基本であると私は感じました。してあげるではなく当たり前だという気持ちで自然と動いて行動に移す。これが福祉の原点だと思い、彫刻家に依頼してあの銅像を作成しました。

ここにいる園生たちに皆さんが何かしてあげようと行動すると受ける側は肩身の狭い思いがするのです。ごく自然に行動して世話をしていただきたいと思います。

先日、施設入所者の保護者の会があり、常任理事の茶圓先生ご一行が来訪されて、処遇が行き届いている、皆さんがとても明るい雰囲気で園生に接しておられると感激されていました。私は謙遜して今日だけですよと言いましたが、そのあと何度が園内を歩いてみたところ、確かに以前と比べたら皆さんの対応が非常に良くなっていると実感し、そして安心しました。それも一つのきっかけでぼちぼち引退しようと考えた次第です。

私は、ここは病院ではなく施設であり、生活の場なのだと以前から強調してきました。確かに医療はあります。天草の約半分の人工呼吸器はここにあります。医療の最先端を行っているけど、入院している方々には生活の場である、というのが普通の病院と違うところです。重度の慢性疾患の医療・看護・介護は成果が表れにくいものです。普通の病院だったら病気が治って退院しますが、それが殆どありません。サービスを提供する側にはそれが一番のストレスになることもあります。それを繰り返していくうちにコロナが発生し、そんな中で皆さん、職務に就いています。しかし保護者の会の後、園内を何回か観て、皆さんが一生懸命対応していることが良くわかりました。

重症の対応も大切ですが、ここは入所者の生活の場であるということを、そしてなかなか帰るあてもないため楽しみも少ないので、どちらかというと生命の安全よりも人格の尊厳を第一に考えてもらって対応していただきたいと思います。人の命は限られています。従来、重度の障害を持っていると二十歳まで生きられないと言われてきました。それが医療の進歩、看護・介護の向上などで皆が長生きできるようになりましたが、だからといって自分の思うようには生きられない人が多いのです。そこを汲み取って、何かを要求されてからでなく、こちらから声をかけ手を差し伸べる。以前からお願いしているようにまず居室への入退室の際はより多くの声掛けをして欲しいと思います。今は他の施設に比べて随分と先を行っているように思います。どうかこれを長く続けて、もっと皆さんが活動できるように活発に動けるよう考えていただきたい。

私の長男は一つの手術をすると次の所と何度も手術をしました。おそらくここの重症管理室にいる人もそのようなことが多いと思います。私が言うのもなんですが命よりもその人の尊厳を大切に対応していただきたい。これを最後にお願いして理事長を退きます。

今後は更に病棟に目を向けますので、私がもう来ないと安心しないでください。というのもケアカンファレンス、特に家族の要望も交えて一人ひとりの対応をどうしたらいいかを考えていきたいと思っています。これまで面会に来れなかった保護者や、親御さん達が亡くなった方もいて、それが兄弟や親戚に代わったりしています。お願いしている一人担当制を通じて入所者が思っていることを感じ取りながら対応していただきたい。

職員の皆さんも年を重ね、腰や手が痛いという人が多くなりました。体調が悪い人でも見守りはできます。人がいない時代に入ってきましたので、皆さんで手助けして、協力・助け合ってください。そして見守りなどでもいいから七十一歳までは働いてください。七十一歳というのは日本の平均で人の世話にならずに生活できる年齢だそうです。それまで勤務できるよう頑張ってください。

長い間お世話になりました。これからもよろしくお願いします。

 

一貫グループ会長
永野 義孝

今月の紙面一覧

1.令和6年 仕事始め式(名誉会長 永野義孝/理事長 永野忠相)
2.能登半島で震度7 能登の地震に思う 海抜 水曜カフェ
3.新年を迎えて 餅つき見学 南画場を作ろう 支援学校作品展
4.一緒に初詣 クリスマス会(後編) 水草とお魚の水槽が来た

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