発進塔

455号 発進塔:梅雨明け

掲載日:2023年07月10日

梅雨末期の豪雨や嵐が連日続いている中のちょっとした時間にトンボの群れが観られたり、小さな蟹がカサカサと畳の上を歩む音が聴こえるようになった。愈々梅雨も開けるようである。

例年この時期になると「雨七日、風七日、陽七日」と言っていた福田節男さんを思い出す。福田さんとは造園師で五十年以上昔に私の家に山水の庭を造ってくれた庭師である。彼は以前、日本海軍の気象担当官として従軍された経験もあり、趣味も似ていて随分お付き合いさせて頂いた方であった。

梅雨とは初夏と盛夏の間にあって、雨天や曇天の日が続く期間である。九州では例年六月中旬から七月下旬がその期間にあたる。ただ以前はしとしと雨の降る日が多く、そんな中に時折強い風の日があったり太陽が顔を出す日もあった印象だが、最近では気候変動によるものか豪雨であったり、嵐みたいに甚大な被害を与えるのが多くなったように思える。九十年代に東北で起こったような農作物の被害が発生しないか危惧もしている。人命は言うに及ばずである。

生き方

年を取って、かたくなに意地を張ることを意固地といい、私を含め大方の人がそうなる。しかしたまには何事に動ぜず、悠然と落ち着いて鷹揚(おうよう)とした方もいる。何故そんな差が生じるのかと考えてみた。勿論その人となりの才能とか遺伝子によるものもあるだろう。

然し最近「菜根譚」を読んでみて、そればかりではなく、その人の生き方・考え方によるものもあるのではと考えるようになった。その積み重ね積み重ねが影響しているのではないかと考えた菜根譚とは「菜根を咬み得れば百事倣すべし」から付けたと言われる明時代の書である。淡白に甘んじ、物質に心を奪われず、貧困に安んじて人生を送れば困ることは何もない、という思想が根底にあるようだ。少しだけ紹介してみようと思う。

「恩を施すは務めて報せざるの人に施せ」

注釈すると、人に恩義を施す場合には、なるべくその人の恩義に報いようとはしない人に、あるいは報いることが出来ないような人にこそ施すがいい、ということになる。見返りを求めるような気持ちを抱くことが絶対にあってはならないと言っているのである。こんなにしてあげたのにと、つい考えがちである。それがいけないのです。

またこうも言っている。

「楽しみは必ずしも尋ねず。基の之れを苦しむる者を去れば楽しみは自ら存す」

とも。楽しみは特にこれを求めない。苦しみ、悩みを除きさえすれば自然とそこに楽しみは存在するものである、と言っているのである。

コロナも5類へ移行し、日常生活も徐々に戻りつつあるが、予後の経過 を観ているとまだまだ注意が必要な点も多いようである。医療系の職に従事している者として可能であれば感染をしないで職務を遂行し、各々が予防に努めながら行動の輪を徐々に広げていきたいものである。

一貫グループ会長
永野 義孝

今月の紙面一覧

1.発達小児外来を開始
2.50周年を祝うピアノコンサート 施設見学 支援金で感染対策
3.クローズアップ-UDe-スポーツ体験会 「契約入所」開始
4.ピアノの調べ ハンドパン お部屋にデザインボード

Copyright© 2020 社会福祉法人 慈永会 All Rights Reserved.