発進塔

442号 発進塔:雑感

掲載日:2021年03月31日

一年以上も続いているコロナ禍の中、少しずつワクチンの接種も始まり、いくらか光明も感じられる昨今である。然しながら抑圧感に苛まされた期間が長かったせいであろうか、人々の気持ちは穏やかではないようだ。と言うのは最近、職員間の意思疎通が若干悪いようだからである。その最たるものが他人への誹謗中傷やいじめ、嫌がらせに類するものである。そんなことで混乱し、割を食うのが園生であってはいけないので一言いっておきたいと思う。ただ多くの職員がそうだと言っているのではないので誤解しないで欲しい。

論語に「其の以す所を視、其の由る所を観、其の安んずる所を察すれば、人焉んぞ廋さんや」という一節がある。ある特定の人を知ろうと思うなら、まずその人の行動をよく観察し、さらにその行動を起こした動機を調べてみる。更にその人が自分の行為に安んじているのかをよくよく探ってみる必要もある。自分の行動に満足し、納得しているのか。或いは反省したり、後悔したりしているのかも知れないからである。この三つをやってみれば、その人の真の姿というものが明らかになるのではないかと促しているのである。

なお「以」とは「なす」と読む。一面的に人や物を見るのではなく、見るよりは「視」を、視よりは「観」を、観よりは「察」を、と表面的なものから、より内面に入り込んで深く見る必要があるという事を意味している。要約すると、簡単に他人を評価してはいけませんよと戒めているのである。それ程、他人を評価する事は難しい事である。なのに、いとも簡単に決めつけている場合が多い。さらに言うと自分を知るという事はもっと難しい。

さて、多くの人々が家族揃って夕食を楽しんでいる頃、入園者に水分補給や清拭をしている職員もいる。

多くの人々がゆっくり眠り込んでいる頃、点滴をしたり、人工呼吸器を見詰めている職員もいる。

多くの人々が花見や買物に出かけている頃、入浴や排泄の介助をしている職員もいる。

多くの人々が春休みの我が子を迎えているのに、感染の予防にとそれを控えさせて我慢している職員もいる。

そんな努力をしていることに関しては良く承知しているし、感謝もしている。

職場内における感染予防対策も完璧とまではゆかないまでも、ある程度は実践された甲斐もあってか、現在迄の所、入園者、職員共々唯一人として感染を認めていないのは幸運である。さらにこれを二度のワクチン接種が完了する迄継続したいものである。

新聞の由来

浜木綿新聞は療育園開園後まもなく、入園児の近況を保護者の方々に知らせようと当時事務職であった倉田明さんが数名の看護師や指導員に呼びかけて、ガリ版刷りの月刊誌「はまゆう便り」として発刊したのが起源であった。未だパソコンも無い時代であった。やがて如水館を設立したのを機に、その業務の一つに加えて紙面を改めて今日のものとなった次第である。

「発進塔」欄は職員教育用にと私が感じる思いを誰かに伝える為に書いたのが殆どであったが、あまり目的を達するどころか、関係ない人に心配かけて了うこともあった様である。

終わりに

私も近年、気力・体力も限界を悟り理事長を退任することに致しました。従ってこの欄は今回を以って一応終了の予定にしています。

人間には避けられぬ生・老・病・死という四苦に加えて愛別離・怨憎会・求不得・五陰盛といった八つの苦労があると言われている。俗にいう八苦である。前の三つは読んで字の如くであろうが、最後の五陰盛とは意味深長で理解しがたい。調べてみると、人間は一つの肉体的要素と四つの精神的要素(受・想・行・識)から構成されているという仏教思想のようだ。こういった苦に耐える為にもせめて今だけは朗らかに生きてゆこう。

社会福祉法人慈永会理事長
永野 義孝

今月の紙面一覧

1.配食センター始動 苓北支援学校新築工事
2.2021年度運営方針
3.旧はまゆう解体 托生を療養施設に 介護報酬改定
4.楽しかったクリスマス会 成人式 特別賞受賞

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