発進塔

432号 発進塔:謹賀新年

掲載日:2019年01月01日

明けましておめでとうございます
この一年が皆様にとって平穏であるよう願っています

共生社会

昔は子供もお年寄りも、障がいがある人もそうでない人も、共に生きる社会をそう呼んでいました。時代が進み30年程前からは、人間の営みによって自然破壊が進み大きな災害が頻発するようになって、それに歯止めをかけようと自然と人間の関係をそう呼ぶようになりました。そして今、共生社会といえば日本人と外国人が共に理解し合って暮らす地域社会のことをそう呼ぶようになりました。

理由は明白です。日本人の平均寿命が伸びる反面、永年にわたって少子化が進行したからです。いわゆる生産年齢層が極端に減少し地域社会が成り立たなくなっているのです。若者の大都市への流出も原因の一つかもしれません。

あまり議論されなかったのですが、逆ピラミッド型に進んでいる人口構成を補正する為にある程度の外国人の雇用を増やさねば経済が行詰ります。そうしないと多額の国の借金が返済不可能になると危惧する人達もいます。

一方、20年位じっくりと子育て支援策を充実させ、その間はITの活用をもっとして時間稼ぎをすべきという意見もあります。事実アメリカでは医療の現場でAIに任せきりで行う手術等進歩が著しいものもあります。医師の手以上にロボットは知識も技術も優れつつあるのです。然し、人情の機微に触れる看護・介護にそれが可能でしょうか。

いずれにせよ、取り敢えずは外国人労働者の方々に頼らなければ現状の維持は難しいであろうし、その為には法人としても準備を整える必要があると考えています。

囲碁や将棋の世界では既に、人工知能は人間のそれを上回りました。ごく近い将来には多くの領域においてそうなるでしょう。しかし人の社会には情緒が必要です。情緒とは人々が折に触れて起こす様々な感情です。先天的備わっている喜怒哀楽ではありません。人が生まれてからこれまでの間に、経験したことにより培われたものです。人間には死というものがあり、それが根本になっているのかもしれませんが、どんな親に育てられたのか、どんな人に出会い別れたりしたのか、どんな美しいものを観たり聴いたりしたのか、どんな悲しみに出合ったのか、どんな本を読んだのか沢山あろうと思います。時にはただ一篇の詩によってその人の一生を決定づけたりすることだってあるのです。

情 緒

先日、藤原正彦氏から未だ店頭に並べられる前の1冊の本『国家と教養』が届けられました。その中に、15歳の頃読んで心を揺さぶられたという宮沢賢治の詩がありました。

宮沢賢治の詩画集の第2章「永訣の朝」という詩で、第1章は「雨ニモマケズ」です。2歳年下で、まだ24歳の妹が高熱で喘ぎながらの最期の願いを聞き入れて、庭の前の枝に積もった雪を慣れ親しんだ茶碗に入れて食べさせた時の心情を詠んだものです。長い詩なので前後を省略して書いてみます。

「あゝとし子
死ぬという今ごろになって
わたくしを 一生明るくするために
こんなさっぱりとした雪の一碗を
おまえは 私にたのんだのだ
ありがとう私のけなげな妹よ」

といった件(くだり)です。藤原さんはこれを読んで沸き起こる感情を覚え、これからはもっと真面目に生きようと心に誓ったと書いておられました。

今まさに命が尽きようとするとき、残される人へのこの気遣いを貴方はどう感じますか。

本年も宜しくお願いします。

一貫グループ会長
永野 義孝

今月の紙面一覧

1.年頭挨拶
2.タイ研修生受入終了 クリスマス会 一年を振り返って
3.村上住職講話 第16回活動報告会 一年を振り返って
4.藤原正彦氏講演 イルミネーション点灯式

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